【熊野通信】その拾九 《光と色の環》
 温かい黒潮の流れと共に陽光あふれる色鮮やかな季節が熊野に巡ってきました。今回は、私達が普段当たり前のように見ている「光りと色」をお伝えします。
●虹の色はホントは何色でしょう・・!
 「飛雪・まぼろし・陰陽・雫・琴の滝・・と」熊野の山々を散策していますと、様々な風情の滝と出逢います。中でもよくご存じの那智の大滝は133mもの落差があり、山の頂から発する大滝は神秘に満ち、自然を神様と崇めた古代の人々の想いが、千数百年を経た今も確かに息づいています。このような滝の前で水の流れに耳を澄ましていると、よく滝にかかる虹を見ることができます。この虹は、自然の光が水しぶきのスクリーンに映ることによって、水の膜がプリズムとなり光が分光され外から赤・橙・黄・緑・青・藍・紫と内側へ、順番に7色に分かれるのです。7色と言っても7種類に見えているだけで、実は色の世界は円環になっており無限に存在しているのです。ちなみに、アメリカでは虹は6色に、他の国では3色にしか見えていない国もある事を考えると、日本人の視覚感性が如何に繊細かがわかります。
●自然はステキな手品師・・!
 しかし、もともと何もない透明の光りから、手品のように色が現れてくる・・・不思議ではないでしょうか?一体色はどこに隠れていたんでしょう?それは光には波長が合って、波長の違いが色の違いだからなのです。長い波長は赤として現れ、短い波長は紫として現れます。私達の目には、赤より外側の赤外線も紫より外側の紫外線も見えないのです。ただし見えないから無いのではなく、皮膚のセンサーでは感じることができ、赤外線は温かく感じ紫外線はメラニン色素が変化して日焼けするのです。また、虹として見える可視光線は光の波長360°の内、わずかに5°の範囲で、私達の肉眼では、ほとんどが見えていないと言って過言ではありません。
●光りの反射が色の本質・・!
 車に乗っている時、隣に赤い色の車が走っていて、高速道路のトンネルの中に入りオレンジ色の照明があたった途端に、隣の赤い車が灰色に色が変わるのをご存じだと思います。これは赤だけの光を反射していた車体に、同じ赤色系の光があたる事で、赤の波長が反射せず吸収されてしまうからで、赤が反射しないから無彩色になるのです。「色即是空」・・まさに色は現象的で移ろいやすく、私達が如何に普段現象的な色の世界に目を奪われているかが解りますが、何よりも自分の目の前の自分と言う色メガネをはずす時が来ているのだと思います。
NPO法人 熊野生流倶楽部 代表 満仲雄二
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