その六拾七 熊野八咫烏(ヤタガラス)
【熊野八咫烏(ヤタガラス)】
 前回は、祈りの道としての世界文化遺産「熊野古道」は、人体で言えば「神経回路」つまり文字通り「神への経路(みち)」だと言うお話しをしましたが、その道の先導役として古くから八咫烏(ヤタガラス)が有名です。

八咫烏大丹倉
八咫烏大丹倉
●サッカーの上手な八咫烏
 よくテレビで報道されている、Jリーグサッカーのシンボルマークがこの「八咫烏」で、もともと明治の頃に日本にサッカーを紹介した、熊野の中村覚之助翁に因んで決められた熊野三山の守り神の「三本足のカラス」がモチーフなのです。
 カラスと言えば、最近では生活ゴミを食い荒らす迷惑な鳥や、何となくずる賢い不気味なイメージを持たれる方が多いと思います。真っ黒な色合いから来る印象もありますが、古来から「霊鳥」として神々の先々を飛んで行き、神が移動する先に危険が無いか察知する道の先導役の鳥として、神社に祀られています。よくご存じの神社の入り口にある鳥居は、この鳥が居る場所なのです。
●太陽に棲む黒い三足カラス
 中国の馬王堆(マオタイ)の出土品の着物の柄にこの三足カラスが太陽の中に描かれています。故事では、昔太陽が十個あって一日に一個ずつ太陽が現れ、十日で一旬(上旬・中旬・下旬)し、世を照らしていた太陽が、ある日総ての太陽が同時に昇り、暑くて草木も燃え苦しいので、九個の太陽を弓の名人が射抜いて落としたと言うお話しがあります。その太陽が地上に落ちてきたら、金色に輝く三本足のカラスだったと伝えられています。 つまりこのカラスとは、地球上の私たちの生命エネルギーの象徴である太陽の中に、さらにその活動状態を決定的に左右する「根源の太陽黒点」の象徴だと考えられます。
 歴史を見ても黒点活動が、私たち人類の文明盛衰に大いに影響することは、過去の事実からも明らかなのです。まさに生命の先導役を担っている「不思議な黒い鳥」と言えます。
●咫(アタ)は長さの単位
 尺が腕を中心とした単位(約30cm)のように、咫(アタ)は手のひらの親指と人差し指をひろげた長さ(約18cm)の意味なのです。八咫(ヤタ)とは、その八倍なのでちょうど小柄な人間の身長と同じになり、何かを先導する人々と言う意味合いも感じられます。また「烏には反哺の孝有り」と言う故事がありますが、カラスは育ててくれた親鳥が年老いたとき、親鳥にエサを食べさせると言う大変親孝行な恩を返す唯一の鳥だそうです。
 ひるがえって私たちの社会を見ますと、年老いた親の介護が苦の殺人事件や、逆に親の乳幼児虐待が後を絶ちません。カラスを不気味と嫌がる前に、自らの在り方をしっかりと見つめ直したいモノです。
 

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